青森でアップルパイ巡りをしている人の裏側

ゆめうさぎの趣味ブログ。アップルパイと推し活記録の置き場です。

pixivに載せたキャスギル凛小説のサンプル

クリスマス数日前に降ってきたクリスマスをメインとしたネタ。

ちびちゅき!時空でのキャスターギルガメッシュ遠坂凛の18禁小説。

の序章(5万文字超え)の最初の部分です。

pixivで「キャスギル凛」タグで探せばすぐに出てくるかと。

タイトルは「ルガル☆エリシュティ」シュメルかアッカド語です。

 

 

12月2日

 

ここは型月学園初等部の放課後クラブ。ちびっ子達が保護者のお迎えを待っています。

 

「イシュタルおねーさん。さようなら」

「はいさようなら。暖かくして寝なさいよ」

ピンク色のもこもこパーカーを着た女神様が手を振って親子達をお見送りをする。

昼間は賑わっていた教室もすっかり静かになり、残る児童は2人となった。そこに1人の保護者代理が訪れる。

 

「げ。1番五月蝿いギルガメッシュ

「ち(舌打ち)………ティアマトはどうした」

魂レベルの腐れ縁。古代メソポタミア都市国家ウルクの都市神イシュタルと、ウルク初期王朝5代目の王ギルガメッシュ。生前あれこれあった最悪の仲の2人が睨み合う。

 

因みに睨み合いで済むだけでも大分マイルドになったと言える。互いに存在自体消えて欲しいと本気で思っている2人のはずだが、現在の女神イシュタルは今を生きる少女を依代とした擬似サーヴァント。依代のおかげで人格がかなり善性に傾き、外見も王から見て十分好みの範疇に収まるようになった。

それでも仲良く手を組む事にはならないが、会話程度なら成立出来るようになった。

 

「別に。ちょっと忙しいだけよ。安心なさい。私だって暇じゃないの。今日の代役は偶々なんだから」

本来ならば、この学童保育は彼女達の先祖になるメソポタミア原初の女神ティアマトの担当だ。しかし、この日は職員会議の為彼女の指名でイシュタルに任されたのだった。

ふわふわと宙に浮いて過ごす彼女は意外と保育員として適任で、トラブルへの移動対応速度が速く、例え床に落とし穴があったり巻きビシ(玩具)が敷かれていても踏まなくていいので、悪戯っ子への対応も余裕。

彼女の同級生達からは想像出来ない程の仕事ぶりであった。ただし、高額な時給を要求される。

 

「おい凛、ティーネ。王が迎えに来てやったぞ」

ギルガメッシュが残っている女児達に声をかけるが、2人ともこそこそと何かを描いていた。

「こら2人とも時間切れよ。大人しく連れて帰って貰いなさい」

「ギル!」

「王!」

イシュタルも声をかけると、子供達はようやく顔を上げた。

 

「もう来たの?もっとおそいかと思ってた」

「王、申し訳ありません。もう少々お待ちくださいますか?」

2人分繋げた机に上には大きな画用紙とクレヨン。端には金色のカードが数枚。

「何だこれは?」

「ダメーーー!!」

男がカードを1枚手に取る。それには何か書いてあった。

 

[おいしいごはんをつくりたいあおい]

 

あおい→葵は凛の母の名前。どうやら彼女は料理の腕を上げたいらしい。

「………七夕なら半年前に終わったぞ」

「そんなもの冬にさせないわよ!」

イシュタルがカードを取り上げて机に戻す。

 

「っていうか、アンタ聞いてないの?多分アンタ達の宝物庫から出てきたものよ?」

「なんだと!?」

イシュタルの説明によると、このカードは昨日凛の父時臣が巴比倫弍屋の若旦那から貰ったらしい。

「クリスマス聖杯カード」という、子供達の願いが叶うかもしれないカードとの事。かもしれないというのは、願いの内容は自由だが、努力しなければ叶わないから。子供らしく慢心せず努力を惜しむなという、大人気ないシステムが組み込まれている。因みに宝物庫の中にあった聖杯の雫を潰して作ったとか。

 

「一先ず巴比倫弍屋に文句を言えばいい事は分かった。で、凛達は願い事を書いておったのだな」

机の真ん中の上には見本と思われるカードがあった。ちゃっかり時臣も願い事を書いていたようだ。

ギルガメッシュティーネ側に移動し、裏返しにしてあったカードを勝手に取り上げて読む。

 

[一族の土地だっかん]

 

「おいティーネ。もっと子供らしい願いはないのか?」

「申し訳ありません。他に思い浮かぶ願いなどございません」

元の世界のティーネは幼くして、自分たちの土地を奪っていった魔術師から土地を奪還する為に作られた部族の長。契約相手であるギルガメッシュと共に過ごすまでは子供らしい自我も感情も薄かった。

 

のだが型月学園では初等部の児童として召喚。ギルガメッシュ繋がりで仲良くなった凛と仲良くなり同居し子供らしく過ごすようになったものの、まだまだ元の世界での思考が抜けないようだ。

 

「代わりに王の願いも書いてみたのですが、イシュタル様に止められまして…」

「なんだと!?見せてみよ!」

「いや、見ない方がいいと思うわよ?」

ギルガメッシュティーネがおずおずと出してきたカードを取り上げる。

 

[王にお友達ができますように]

 

(イシュタルはリアクションに困っている)

「なんとぉ!!」←ギルガメッシュはコメントに困っている

そこに凛が解説を入れた。

「ギルのお友だちってドゥちゃん(エルキドゥ)しかいないでしょ?でもドゥちゃんにはギル以外にもいっぱいお友だちができたから、ドゥちゃんがギルのこと心配していたの。だからじゃない?」

凛の横ではティーネが静かに頷いている。

 

「私はこの学校に来てお友達は素晴らしいものだと学びました。だから王にもお友達が増えたら良いと願ったのです」

「でも本人が望んで友は1人でいいって言ってるんだからやめた方がいいって下げさせたのよ」

素直に自分が良いと思ったものをすすめたいという子供達の考えと、女神として俯瞰したイシュタルの意見はどちらも間違ってはいない。

ギルガメッシュ本人はというと気持ちは嬉しいがやはり望まない内容だと思った。

 

「それでねー」

「?」

凛はティーネと見つめあってタイミングを合わせる。

「じゃ〜ん!」

「僭越ながら2人で王を描かせて頂きました」

2人は先程まで隠していた画用紙をひっくり返して彼に見せる。

 

「おぉ!これは我か?」

「うん」「はい」

「どちらかと言えばアイツはサンタクロースじゃない?って言ったのよ」

2人の合作は真っ赤なサンタクロースの服を着た金髪男ギルガメッシュの似顔絵。その横に笑顔の自分達も描いてあるハートフルな絵だった。

 

「愛い!愛いぞ2人共!クリスマスまで待たずとも我が直々に褒美をやろう!」

「わ〜い」

「ありがたきお言葉です」

ギルガメッシュは2人を抱きしめて大喜び。そして彼女らの頭を撫でながら凛の机の上にあるカードの山に視線が動く。

 

「凛。ソレは全部お前が書いたカードか?」

「うん!」

カードは最初に読んだのを含めて最低5枚はある。

「………お前は欲張り過ぎである。少しはティーネに分けてやれ。お前達は極端過ぎる」

「違うのです、王」

ティーネは凛を庇う。

 

「彼女は子供じゃなきゃお願いできないからと、大人になってお願い出来なくなった家族の分まで書いているのです」

はじめに見た葵の願い事も凛が母を観察して思いついたものだった。

「左様か。お前は優しいヤツだな。だがお前自身の願いは何だったのだ?」

「クリスマスはお父さまといっしょがいいってかいたの」

特に最近はテスト作りのせいで帰りが遅い父を心配しているらしい。

 

「よしよし。その日は必ず早く帰らせるからな!」←感動して涙ぐんでいる

(何でもいいけどサンタクロースへのお願いって基本は物品じゃないかしら?)

イシュタルは微妙な表情をしながら、手作り感溢れる金ピカなポストを持ってくる。

「じゃあギルガメッシュの以外はこれに入れてってね」

「お願いします」

ティーネは結局願い事を変えずに投函した。ついでにと時臣の分まで入れる。←いいのか?

 

「じゃあ凛ちゃんのと、サトウさんのと…」

この小さい凛が言う「凛ちゃん」とは高等部に通う未来の自分のこと。サトウさんは住み込みのお手伝いさん。

「イシュタルちゃんの分もかいて入れたよ!」

凛は全てのカードを投函し満足気だ。対するイシュタルは胸の内で心配になる。

 

「あらありがとー。因みに何て書いたの?」

「んーとねぇ」

凛は自信満々に踏ん反り返った。

「お兄ちゃんが来ますように!」

「絶対にイヤ〜〜〜〜!!」

 

 

『これは、とある時空の冬のお話』

 

トラブル巻き込まれ体質な脳筋…いえ、いつも通り筋トレ大好きヒロインがギルガメッシュに振り回されるお話なんですけど、ちびちゅき!世界が舞台なのでギルガメッシュだけで何人いるんですか??ってくらいいますね。サムレムの若旦那も参戦したドタバタ系です。

生憎すけべシーンだけしょうもない内容なのですが、気になる方は検索してね。

シュメル神話『ドゥムジとエンキムドゥ』 ドゥムイシュの馴れ初めをラノベ風にしてみた

来年はシュメル神話を布教したいな。

そんな事を考えているゆめうさぎです。こんにちは。

 

図書館で借りた本にドゥムジとイシュタルの馴れ初め神話が書いてあったので、私の妄想半分で読んだ内容を綴っていきます。これってドゥムイシュの馴れ初め神話なのですが、前半はシャマシュとイシュタルがイチャコラしているようにしか見えないし、馴れ初めっていうよりはイシュタルがエンキムドゥに遠回しに失恋したお話ってイメージです。

 

正式なタイトルは『ドゥムジとエンキムドゥ』です。

前半が麻(レーヨン)から服を作るまでの工程のお話、後半はドゥムジとエンキムドゥのアダミン・ドゥッガです。

 

アダミン・ドゥッガとは?

まずアダミン=論争する(決闘する、対立するなどの意味もある)

  ドゥッガ=話す・行う という意味で、当時の人気ジャンルだったそうです。

例えば『夏vs冬』とか『牛vs馬』など、擬人化されたキャラクター達が言い争います。

 

流れはどれも一緒

①AとBがそれぞれ自己PR

②AとBがお互いをディスり合う

③通りすがりの神が登場して勝敗を決める

というものです。

 

『ドゥムジとエンキムドゥ』はアダミン・ドゥッガの亜種になります。

エンキムドゥが草食男子過ぎて、ドゥムジと戦ってくれないんですよね。。。

でもまぁ当時の人気ジャンル アダミン・ドゥッガに合わせて作られたのかな?って神話です。

 

原典はほぼセリフしかなくて情景描写がない為、ほぼ妄想で補填しています。他の逸話も混じっていますが気にしない。

 

登場人物

シャマシュ=ウトゥ

多分独身時代のシャマシュ。イシュタル(イナンナ)の双子のお兄ちゃんなんだけど、何故か彼女の嫁入り話を取り仕切っている。普通はお父様のポジションだぞ☆

乳製品が大好き→乳製品を作ってくれるドゥムジ大好き!なんだと思う。

 

イシュタル=イナンナ

年頃だけどまだまだお兄ちゃんに甘えたい妹。ナツメヤシをシンボルとする女神で聖花はギンバイカ。その為植物神であるエンキムドゥに恋をしている。愛らしい外見。

 

ドゥムジ(後のタンムズ)

牧神。最高神エンリルの息子で好青年。お調子者。この頃は天の神(後に冥界神となる)

 

エンキムドゥ

植物神。あっさり草食男子。

 

※原典はウトゥ&イナンナ呼びですが、聞き慣れたシャマシュ&イシュタル呼びで書きます。

 

場所はおそらく、シャマシュとイシュタルの実家。イシュタル視点で書いてます。

 

「イシュタル、ちょっとお散歩しようか」

「イヤよ、お兄さま、お散歩なんかより、一緒にお昼寝しましょう。お外は嫌な予感しかしないわ」

最近、シャマシュがそわそわしている。しかも私に内緒であの気に入らない牧夫に会いに行っていた。本当に嫌な予感しかしない。

 

「そんな事言わないでさ、ほら着替えよう?髪も可愛くてやってあげる」

「むぅ」

お外に出たくないのは本当だけど、身支度をやって貰えるのは嬉しい。彼が作ってくれる服はいつも可愛くて、服に合うように髪の毛も整えてくれて、自画自賛なんだけど毎回私に似合っていると褒めてくれる。

この日もいつものように流され、されるがままにオシャレをした。我ながら可愛い。

 

お兄さま…双子の兄シャマシュは、小さい頃から器用で何でもできた。忙しい両親に変わって、身の回りの事は何でも彼がやってくれた。一緒に生まれて、しかも生まれた時はシャマシュも女の子だったはずなのに、気がついたらこうなっている。それが私達兄妹の日常だ。

 

そんなシャマシュとも、そろそろお別れの時期になる。お互い大人になってきて、シャマシュは既に仕事をこなしている。何故か守護都市を2つも任された彼は忙しい。こうして実家で2人きりで過ごす時間も、随分と限られてきた。

 

「温かい」

「ん?そうだね」

私の髪を梳く彼の手はとっても綺麗だ。シャマシュは男の子になってもあまりゴツゴツした男らしい体型にはならなかった。父さんもスリムだからそういう家系だからと思ったけれど、生き別れ状態になっている上の兄はゴツくて雄々しいという噂だ。あんまり関係ないのかも。

 

「お兄さまの手は気持ちいいわ」

「キミの髪の毛も気持ちいいよ」

スラリと長い指に整った爪。4柱目の太陽神にして主神となるシャマシュは常に温かい。私も金星を継ぐ者としてそれなりに温かいはずだけど、シャマシュには全然敵わなかった。

 

「やっぱりお家に居たいわ。ねぇアレの練習相手してよ」

「だーかーらー、そういうのは恋人同士でするものだってば」

「その未来の恋人の前で恥をかきたくないから練習したいの!お兄さまなら安心でしょう?」

愛の女神なのに処女神。どうすればそんな組み合わせになるのか分からないけれど、生まれた時からそうなるように言いつけられている。愛の行いは本能で分かる。けれども経験がないまま1人前の愛の女神として世間に放り出されるのは違うと思うのよね。というわけで1番信頼できるお兄さまで練習するのが最適だと思う。

 

「イシュタル。オレだって、教えてやれる事とやれない事がある」

「知ってる。でもエンキムドゥよりはまだお兄さまの方が分かっていると思うわ」

私の恋人候補ナンバー、いえオンリーワン!愛しのエンキムドゥはびっくりするくらい草食男子ってヒトだ。絶対私をリードしないでしょう。

 

近所のお兄さんてポジションの彼は、素朴な顔立ちで、シャマシュよりちょっと華奢なんだけど背は高くて意外と力持ちでいつも畑仕事を手伝ってくれる好青年。とっても優しくて何よりガーデニングのセンスがいい!素敵だなぁと思ったお庭や果樹園はどれも彼がデザイン・指導されたもので他の神には到達できない何かを彼は持っているのだ。けれども奥手なのか私が年下過ぎるのかなかなか恋愛対象として見てもらえなかった。

 

さらには素朴過ぎて彼の知名度はものすごく低い。だってお友達に彼を話しても誰も知らないのだ。あんなに優秀なヒトなのに勿体無い。だから将来は私が結婚して知名度を上げてあげたいと思っている。父さん、そしてシャマシュと共に次期アヌンナキ有力候補の私は神の中で高序列が確定している。エンキムドゥだって私と結婚すれば絶対フォロワーも増えて有名神になるわ。

 

「よし、支度もできたし、行こっか」

「え」

いつの間に、、、大好きなエンキムドゥの事を考えている間に支度が終わっていた。

サマーウール100%のワンピース。花で飾られたサンダル。何故か大きなベールを靡かせるギンバイカのカチューシャ。そしてレーヨンのショールには小粒の宝石が散りばめられている。

 

「どう見ても散歩の服じゃなくない?」

普段は飾り物なんてつけないもの。お出かけ用よね?敷地外に出る気満々よね?

「ギリギリ散歩だよ。敷地からはちょっとしか出ないから安心して」

ニコニコと笑顔を崩さないお兄さま。これ以上抵抗したところで小脇に抱えられて強制的に連れ出されるのは目に見えている。

 

「分かったわよ。家から出ればいいんでしょ?出れば!」

「うん。行こう」

シャマシュに片手を引かれ、低空飛行のまま外に出る。天の神である私達に地上の重力は関係ない。ふわふわと浮かんでいる為地面にしがみつく事が出来ない。私は無抵抗のまま彼のついて行った。

 

ウチはいつもそんな感じだ。シャマシュは小さい頃から人見知りで心配性で過保護。私のお世話や護衛をしてくれるのはありがたいけど、殆ど自由が無かった。けどこれはこれで心地良いと思っている。

外の世界は危険がいっぱい。見た目が愛らしい私はちょっと油断しているだけで暴行未遂に遭うのだから、頼もしい護衛は絶対に必要である。こればかりは華奢で温厚なエンキムドゥには頼めなかった。

 

もちろんいつかは私自身キエンギ最強の女神になって、もし何かやられても自力で3倍返し出来る強い女神になってやると心に決めている。

そう思いつつ、なんだかんだで頼もしい兄の横顔を見るのも大好きで、ついついこの甘えて過ごせる今の状況に身を委ねているのだった。

 

「見てごらん。麻の実が熟している。我ながらとってもいい出来だ。今年は絶対最高品質の服になるよ」

「……そうね」

年中ウールの服を着る日が多いけれどレーヨンも好きだ。だってレーヨンになる亞麻をエンキムドゥが大事に育ててくれる。この畑はシャマシュが私用に作ったものだし、シャマシュが仕立てまでやってくれる服は着心地がいい。けれども好きなヒトが作ってくれたらもっと素敵だと思うのよね。

 

「ねぇイシュタル。キミに龍の子を会わせたいんだけど」

「却下」

そういう事か。

これは、シャマシュは唐突に私に嫁に行けと遠回しに言っている。

具体的にはドゥムジの嫁になれという話だ。ドゥムジの母親は天の龍らしい。この流れは今からドゥムジを連れてきて私に彼と婚約をしろって意味だ。

 

「イシュタル………ワタシはキミの花嫁姿が見たい。だからこの亞麻をキミにプレゼントしたい」

「お兄さま」

私は知っている。シャマシュは個人的な気持ちで話す時はオレ呼び、神や兄という立場から話す時はワタシになる。よって私の嫁入りは彼の本当の希望では無いでしょう。父さんか、お祖父様か、上の誰かに言いつけられたってところかしら?

 

だからって相手がドゥムジはないでしょう。

そりゃあシャマシュはドゥムジに懐いているからいつまでも近所付き合いをしたいのかもだけれど、私の知ったことではない。エンキムドゥにしてよ。

 

「お兄さまが亞麻をくれたところで誰が梳るんですか?」

完璧主義のシャマシュは、毎年自分で栽培した亞麻は自分と直属の部下で収穫し、紡いで服の仕立てまで一貫して自分で行なっていた。

逆に私にはそんな技術も知識もない。一応シャマシュ達の作業を眺めてはいたものの、こういう地味な作業は一切頭に入ってこなかった。

 

「そりゃキミの為に梳く者を手配するよ」

そうでしょうね。少なくともドゥムジはやらないでしょうし。

「じゃあ梳く者を連れてきたとして、誰が糸を紡いでくれるんですか?」

「もちろん紡ぎ手を連れてくるけど?」

まぁここまでは簡単そうだから誰でもいいか。でも次の工程は素人には難しいはず。

 

「じゃあ紡ぎ手を連れてきたところで誰が二つ撚りにするんですか?」

「もちろん撚糸工を連れてくるよ?」

む。ちゃんとプロを用意するのね。

 

※この辺は原典の粘土板が破損で不明

 

「じゃあこれらの糸を誰が織るんですか?」

「もちろんキミの為に織工を連れてくるよ?」

「じゃあ織工を連れてきた後に誰がそれを裁つんですか?」

「もちろんキミの為にそれの裁断工を連れてくるよ?」

お兄さまは一歩も引かない。次が最後の質問だ。

 

「………じゃあ、お兄さま。裁断工を連れてきてくれた後で、私は誰と寝るんですか?」

私が言うのもアレだけどシスコンのお兄さまが、私が誰かと寝る許可を取るとは思えないけど。

「もちろんドゥムジと一緒に寝るよう期待してるよ」

「!」

え。絶対イヤ。ぶるりと寒気がした。

 

「まぁまぁ、そんな心配しないでよ。ちょっと座ろう?」

困ったように笑うシャマシュは、畑の柵に並んで座るよう促す。まだ近くにドゥムジはいない。けれどもそのうち来るのではないかと警戒して辺りを見回した。

 

「もしかしてドゥムジ探してる?呼んでるけどまだ来ていないね。一応キミのお気に入りエンキムドゥにも声はかけてるんだけどさ、どうだろうね?」

お兄さまは私の事なんてお見通しと言ったところか。にしてもエンキムドゥまで来るなら私も大人しくすべきだろうか?

仕方なく彼の隣に腰をかける。静かに畑を抜ける風が心地よかった。

 

「そうだイシュタル。嫁入りの話とは別に、キミ、アヌの養女になるから頑張ってね」

「はい?」

突然の養子縁組の通達。シャマシュの話では、私は成人すると同時にウルクの都市神を任せられるらしい。それですでにウルクの都市神になっているアヌ=ひいお爺様の娘としてウルク入りするんだそうだ。早く言ってよ。

 

都市神をするならなるべく配偶神はいた方がいい。と言いつつ目の前のシャマシュは2つの都市を掛け持ちしながらも独身である。あ、でも近々コイツも誰かと結婚するかもしれないわね。お見合いとか、そういう話題は一切聞かないし、半端なく人見知りなコイツに彼女がいるとは思えないけど、いつかどこかの女を当てがわれるでしょうね。可哀想に。

 

「アヌがさ、天界の管理もキミに任せたいって」

「え?私?」

「うん。冥界のエレシュキガルと対称になるようになんじゃない?あっちが地の女主人だから、キミは天の女主人てポジションだね。悪くないと思うよ?」

げぇ。大人になった途端大量の仕事を押し付けられる未来しか見えないわ。そりゃ与えられるからには頑張りますけど。

 

ウルクなら実家も近いし、ワタシのラルサとはすぐ隣だから安心だろ?それに天の管理は大変だろうけど、ドゥムジみたいな定住タイプのパートナーが留守番してくれたらキミもお仕事しやすいんじゃないかな?」

「………むしろそっちは遊牧民になっていただいて結構ですけど」

普通羊飼いってのは移動するものでしょう。ドゥムジは羊以外も担当しているようだけど。

それにエンキムドゥだって定住タイプ。むしろ彼の方がお留守番に最適なのでは?

 

「お兄さま。お兄さまが何て言おうと私の心はエンキムドゥがいいのです。あのヒトは倉々に穀物を積み上げます。大麦を豊かに育てます。彼は、大麦が榖倉の中にたくさん積んである…そういうヒトです(イシュタルなりに褒めている)。それなのにドゥムジは羊を小屋に放しているだけじゃないですか?」

あんなメェメェ煩い小屋持ちじゃあゆっくり昼寝する事すら出来ないわ。私はもっと優雅な生活をしたい。古来より『農夫の心は豊か。牧人は夜も昼も眠れない』と言う。牧神なんぞ真っ平ごめんよ。

 

「イシュタル。これでもワタシは可愛い妹であるキミの幸せを願って提案しているんだよ?一体彼の何が気に入らないんだい?彼が作るバターは素敵だし彼が用意するミルクは甘いよ」

それ全部お兄さまの好物じゃん。私にはどうでもいいわ。

「ドゥムジが触れるものは全て美しくなる。そんな彼がキミを娶る事を願うよ」

「私は元々美しいっての」

私、美の女神の主神ですけど?

 

「美しいウヌ石とシュバ石(宝石の類?)で飾られた乙女イシュタル。どうしてそんなに彼を気に入らないんだい?彼の素敵なバターを、キミは彼と一緒に食べられるんだよ?ドゥムジはエンリルの息子だから由緒正しいおぼっちゃまだよ?すっごくいいと思うけど」

シャマシュ………どんだけアイツのバターが好きなのよ。。。

あとエンリルの息子ってのは私達の父さんも一緒じゃない。腹違いだけど。

 

「っていうか、ドゥムジが私を妻にするわけないじゃない。アイツは絶対私に新しい着物を着せないでしょうし、アイツの最上級のウールだって私には触れさせないでしょうね」

ドゥムジとは物心つく前からの付き合いだけど、あくまでシャマシュが彼に懐いているのであってシャマシュに付き添っていた私はこれっぽっちも仲良くなっていない。

 

(げ)

噂をしていたら件の牧夫の姿が見えてきた。なんで今日に限ってコイツの方が先に来たのよ。

別にドゥムジだって見てくれは悪くない。まぁまぁ美形だとは思う。でも単に顔だけだったら横にいる兄が世界最高に好みで美しいわけだし、身体だったら前に見かけたニヌルタみたいに筋肉隆々な男性が好みだ。逆にドゥムジはその貧相な身体でよく神獣の世話をしているなぁと思う。きっと神獣が賢いのね。もしくはお姉さんが優秀だからかしら?

 

「やぁシャマシュにイシュタル。今日もお揃いだね」

「こんにちはドゥムジ」

「……………」

ニコニコと他所向けの笑顔をするお兄さま。そのまま2柱は無難な世間話をする。でも絶対この後は私とドゥムジを結婚させる為の話題になるでしょう。イヤ。

 

「私、エンキムドゥのお嫁さんにしてもらうわ!」

「え?」

「イシュタル!?」

もう言ったもん勝ちである。どうせエンキムドゥもここに来るのだ。勢いでいくしかない。

 

「豆を育ててくれるエンキムドゥ、大麦を育ててくれる…むぐ!」

「はいはい。ちょっといい子にしててね」

シャマシュに口を塞がれる。

私は不安定な柵の上に座ったまま、お兄さまに抱き寄せられ頭を撫でられているように見えて固くホールドされている。口に押し当てられた彼の手のせいでくぐもった声しか出ない。

 

(お兄さま!ひどい!何すんのよ〜〜〜!!)

「こら暴れないの」

「む〜〜〜!」

振り解こうにもシャマシュは見た目の割にかなり力が強くて動かない。もぉ〜将来は絶対シャマシュよりフォロワー増やして私は方が力持ちになって見せるんだから!ってか帰ったら覚えてなさいよ!

 

(こうなったら最終手段!本当は人前でしたくなかったんだからね!)

「ひやぁ!!」

シャマシュの尻たぶを思いっきり掴んでやった。彼から泣きそうな悲鳴があがる。

(こうかはバツグンだ)

私は腕を振り解くことを諦め逆に責める作戦に切り替えた。元は一卵性ってヤツの双子なのだ。シャマシュの弱いところなんて知り尽くしているに決まっている。

 

「ちょっと!イ…ひぐっ!(涙)」

「お返しよ!」

お互い体勢を崩すが仕方がない。

不意打ちでシャマシュの手が離れた。このままタダで終わらせる妹じゃないって事をしっかりと分からせなくては。

 

「痛ぁ!」

私達は揃って後ろの麻畑に落ち、大して固くはないが柔らかくもない麻が潰れながらも服に刺さってくる。私の髪の毛も乱れてしまい、麻の実がついた。それでも構わず彼に馬乗りになり、腋の下をくすぐった。

 

「え、ちょ、まっ!ぎゃぁ!」

シャマシュは涙目で腋に力を入れるが時すでに遅し。私のくすぐり攻撃の方が上だ。

後ろでドゥムジが何か言っているような気もするけど、今はどうでも良かった。

「イシュ…無理!やめぇっ!(涙)」

ふふん。いつも冷静なお兄さまが泣き喚くってのも楽しいわね。けれども目的はそこじゃない。

 

「お兄さま!」

「な…に?」

私はこちらが上の体勢は変えず、シャマシュの両肩を地面に向かって押し付けた。

「私は!エンキムドゥと結婚したいの!そっちを手伝って!」

「………………」

こんなに宣言しているというのに、お兄さまは首を縦に振らない。

すると、すっかり忘れていたが柵の外にいたドゥムジが口を挟んできた。

 

「待てイシュタル。あの農夫のどこが私より優れているというのだろうか?」

「は?」

何?ケンカ売りに来たの?

そう思ったが、口に出すのを我慢して上半身だけ振り返る。

するとドゥムジが演説か何か…いや彼の場合は営業トークか…柵の上に仁王立ち(実際は若干浮いているかもしれない)して自己アピールを開始する。

 

「長そうだけど聞いてやって」

「ちょっと」

隙を見て起き上がったシャマシュが私を抱え直す。私は嫌でもドゥムジのアピールを聞く体勢となった。

 

ドゥムジの自己アピールタイム

もし彼が私に服をくれるというならば、私は彼にウールをあげよう。

もし彼が私に白い粉をくれるというならば、私は彼に牡牛をあげよう。

もし彼が私に最上等のビールを注いでくれるというならば、私は彼に黄色いミルクを注いであげよう。

もし彼が私に甘いビールを注いでくれるというならば、私は彼にヨーグルトを注いであげよう。

もし彼が私に念入りに作られたビールを注いでくれるというならば、私は彼によく攪拌されたミルクを注いであげよう。

もし彼が私に甘いハルハル(ビールの一種)をくれるというならば、私は彼にイティルダ(酪農品)をあげよう。

もし彼が私に甘いパンをくれるというならば、私は彼に蜜入りのチーズをあげよう。

もし彼が私に小さな豆をくれるというならば、私は彼に小さなチーズをあげよう。

もし彼がそれらを全部食べてしまったり飲んでしまったなら、私は彼におまけのバターとチーズを贈ろう。

一体何において彼が私に優っているのだろうか?

 

「……………………」

私はシャマシュと共にその長い独り言を聞いてあげた。

「ねぇ、今のって何のアピール?」

「ん、、、う〜ん」

シャマシュも返答に困る。

 

百歩譲って私への捧げ物の話だったら分かるのだ。

けれどもよくよく聞けばあくまでドゥムジとエンキムドゥのやり取りシュミレーションではないか。今ここでアピールする意味が分からない。

 

「イシュタル。キミの夫に相応しいのはエンキムドゥではなくこの私。もし彼が反対すると言うならば、私は彼の草原に私の羊達を放とう!」

(え〜)

全然話の流れを掴めないんだけど、やっぱりあれって求婚の前置きだったの?

こちらは話を聞くのに疲れてもう帰りたい。帰ってシャマシュとお茶でも飲んで、愛の練習をしましょう。きっといい気分転換になる。

 

「!」

するとドゥムジの後方から拍手が聞こえてきた。その人物を確認する為、私はシャマシュから離れて浮遊する。

「エンキムドゥ!」

いつからいたのだろう?その人物は渦中のエンキムドゥだった。

 

「こんにちは、イシュタルとシャマシュにドゥムジ。話は聞かせてもらったよ」

「!?」

話って一体どこからかしら?最初からならいいけど、もしかしてドゥムジの要らない自己アピールのところから?それは困る。余計な誤解をされていそうだわ。

そしてその誤解は当たっているようで、エンキムドゥはドゥムジに語る。

 

「ドゥムジ。私はキミと争う気は無いよ」

(争ってよそこ!アンタだって私のこと好きでしょう?)

あぁ、エンキムドゥの優しい眼差し、柔らかい表情。大好きな彼の顔がこんなにも残酷に見えた事なんて一度もない。

そんな私の気持ちなんてつゆ知らず。彼は続けて語る。

 

「キミの羊達が私の土手の草を喰みますように!

 私の麦畑の中をキミの羊達が自由に歩き回りますように!

 ウルクの輝ける畑の中で、穀物を喰みますように!

 キミの羊や仔羊達が私のイトゥルンガル川の水を飲みますように!」

えぇ!?なんでウルク!ドゥムジとウルクって関係なくない?あともしかして、私がウルクの都市神になる事を既に知っているって事?

 

「エンキムドゥ」

不安でパニックになる私など彼らの眼中にはないのだろう。

ドゥムジは喜んでエンキムドゥの手を取りがっちりと握手をする。

「私とイシュタルの結婚式には、キミを私の友人として招待しよう!」

「ありがとう」

いや、アンタなんかと結構する気ないし。そう言いたかった。ところが

 

「イシュタル」

エンキムドゥのつぶらな瞳が私を捉える。

「はい」

今の私はシャマシュと戯れた時にくっついた草で汚れているだろう。けれども普段から畑仕事をするエンキムドゥは、この程度の汚れは気にしない。

 

「私は小麦と豆をアナタに捧げましょう。清らかな乙女イシュタル。私は私に用意出来るもの全てをアナタにお持ちしましょう」

「………………」

捧げ物は素直に嬉しい。大好きな彼の穀物は絶対に美味しいでしょう。けれども私が彼に求めるものはそんな物では無い。そしてこれ以上……先の言葉を紡がないで欲しい。

 

「愛と美の女神イシュタル」

「…エンキムドゥ……」

エンキムドゥは私に向かって深々と頭を下げる。下げなくたっていいのに。

最後に見えた彼の笑顔は、やっぱり残酷に見えた。

 

「ご婚約おめでとうございます。我が親友ドゥムジを、今後ともどうかよろしくお願い申し上げます」

 

目の前で、シャマシュと、エンキムドゥと、ドゥムジが手を取りあっている。

すっごく近くに居るんだけど、それがすごく遠くに感じた。

 

あぁこれは夢。そう悪夢。悪夢であって欲しい。早く覚めたい。覚めたら、いつものようにお茶を入れてもらって、ほっとひと息ついて、それから、彼の元へ、会いに行きたいと思っていたのに。。。

 

 

原典では最後に書記がイナンナを讃えて終わります。

 

※中盤でシャマシュがイシュタルの口を塞いでいるシーン→原典ではイナンナがエンキムドゥの魅力をアピールしているはずなのにそこだけ原文破損しているんですよ。わざと?ドゥムイシュ過激派による犯行?私はすっごく気になります。

 

資料で見かける「ウトゥとイナンナは親密でしばし不倫関係にあった」っていうのは、あくまで不倫だからこの神話の後に何かあったのだろうか?むしろあって欲しい笑。めっちゃ気になります。

 

例えばウルクのライバル都市キシュでは都市神ザババ(ニヌルタ=ニンギルス)とイシュタルの神殿を作って「この2柱は夫婦です!」って事にするんだから、シャマシュ&イシュタルの神殿を作ったマリ市でも「この2柱は仲良しカップルです!」って主張していいと思うんだ(妄想)

個人的には神殿の建設=推し活で、複数神殿の建設=推しカプであって欲しい。

 

因みにドゥムジですが、イシュタル(イナンナ)の夫ではなく恋人表記な事が多いです。

何故かって?恐らくイシュタルがドゥムジの子供を産まないからかと。

この時代は、結婚という契約だけでなく子供が生まれて初めて夫婦になるんですよね。

その為、ドゥムジはイシュタルの配偶神だけど恋人表記にされがちなんだと思います。

紛らわしいので私は夫扱いしますけどね。

 

せば